みんなの敵性語広場

昭和十六年の対米開戦後、敵性国語廃止の主唱者陸軍は、此の兵食の英語みたいな呼称に困惑し、「辛味入り汁かけ飯」と改めさせたというエピソードが残っている。

阿川弘之『食味風々録』 新潮社 2004年 15ページ

エア規制

戦時中、英語の使用を法的に禁じていた事実はありませんでした。英語使用を取り締まる法規が存在しないかわりに、「好ましからざる行為」や「けしからん風潮」として、有形無形の社会的圧力や自主検閲により使用が制限されたのです。つまるところ、明文によらない「空気」という不可視のルールによる事実上の規制でした。程度の差こそあれ、このあたりは今も昔も大きく変わりませんね。あくまで法規によらない「規制」であったことから、敵性語の排除は完全に、当時の表現なら挙国一致的に、使用の制限が徹底されていたわけではありませんでした。例えば日本軍においても(全体ではないにせよ)現場レベルでは、日常的に英語(英単語)が使用されていました。戦前に比べるとコマ数が減少したり、必修科目から外されたとはいえ、英語の授業自体は依然として実施されており、文部省の検定をパスした英語の教科書が戦時中に発行されています。


誤爆

本来は交戦国の言語を忌避すべきところを、ヒステリックにカタカナ語全般を目の敵にした結果、本来は攻撃対象にすべきでない枢軸同盟国の言語が槍玉に挙げられた笑えない出来事もあったそうです(都市伝説?)。


大日本帝国陸軍

敵性語を排除する動きが激しかったのは海軍よりも陸軍でした。イギリス海軍を範として発展してきた海軍の場合、突如として敵性語(英語)を排除してしまうと、実際の業務に支障をきたすおそれがあったからです。英語由来のカタカナ語の代替として漢字による急造の用語をあてがったとしても、現場が混乱するのは目に見えており、現実的な利益がまったくないものと判断されて、敵性語(カタカナ語)狩りが行われませんでした。


敵性語狩りは世界共通

敵性語狩りが行われたのは何も日本に限ったことではありません。第一次世界大戦のアメリカ合衆国においてもドイツ語が敵性語狩りの槍玉に挙げられました。具体例を挙げると「ハンバーガーがリバティサンド」「ザワークラウトがリバティキャベツ」「フランクフルトがリバティソーセージ」という「愛国的」な表現に改められました。


グラマラス・シャーリーが言うことにゃ

フリーダム・フライを食べる手が止まらないよな
by シャーロット・E・イェーガー大尉
ストライクウィッチーズ 501部隊発進しますっ! 第4話 Aパート冒頭

(2019/05/08追記)


薄皮稲荷饅頭


コロナショック2020

【河野防衛相】「なぜカタカナで言うのか」和訳提案 クラスター、オーバーシュート、ロックダウン

※注:クラスター:感染集団、オーバーシュート:爆発的な患者急増、ロックダウン:都市封鎖 (2020/03/25追記)

https://fate.5ch.net/test/read.cgi/seijinewsplus/1585093206/


21世紀の韓国における敵性語狩り

21世紀の敵性語狩り。罰則付きの遡及効を備えた法律を21世紀に成立させた国だけに今さら驚いたりしないぞ(笑)。

(2020/05/15追記)

敵性語 愛国語
カレーライス 辛味入汁掛飯(からみいりしるかけめし)
サイダー 噴出水(ふんしゅっすい)
フライ 洋天(ようてん)
キャラメル 軍粮精(ぐんろうせい)
コロッケ 油揚げ肉饅頭
シュークリーム 薄皮稲荷饅頭 

2013/9/14作成
以後適宜追加改定予定